D01 多波長宇宙論データを用いた究極的物理解析ツールの開発

本研究の目的は、研究項目B01-04で得られる宇宙マイクロ波背景放射と宇宙の大規模構造(重力レンズ効果と銀河分布)のデータをベイズ統計の枠組みで統一的に解析し、現在宇宙と初期宇宙の加速膨張の起源に関わる宇宙論パラメータの事後確率分布(Posterior probability distribution)を計算するソフトウエアを開発することである。

従来の解析手法では、宇宙マイクロ波背景放射、重力レンズ効果、銀河分布のデータはそれぞれ単独で扱われ、互いの相互相関は部分的に考慮されるのみであった。相互相関を全て統一的に考慮することにより、2つの重要な成果が得られる。一つは、情報量が増えることにより、宇宙論パラメータの統計的誤差を小さくできることである。もう一つは、異なるデータ間の整合性をチェックすることで、系統的誤差を小さくできることである。特に、宇宙定数(Λ)と一般相対性理論に基づく宇宙の標準モデルである「ΛCDMモデル」の枠組みで全てのデータを解析した結果、異なるデータ間で整合性がとれず、それが系統的誤差によるものでないと結論できたとき、高い確度でΛCDMモデルを棄却できる。そのような結論は現代物理学に大きな影響を与えるから、結果の信頼性のチェックが重要であり、異なるデータ間の相互相関を全て取り入れた統一的なデータ解析は、結果の信頼性の確立に大きな役割を果たす。

本研究は、研究代表者と分担者がこれまで行ってきた研究の自然な拡張であり、ソフトウエアの開発は順調に進んでいる。宇宙の物質密度分布は対数正規分布に従うと仮定し、物質密度分布を高速で生成するシミュレーションコード、そしてそれから観測可能量である銀河の位置の3次元分布と、物質密度場の重力が背景銀河に及ぼす重力レンズ効果を計算するコードは完成し、研究代表者のウエブサイト(http://wwwmpa.mpa-garching.mpg.de/~komatsu/codes.html)で一般に公開する。

平成27年度と28年度の研究成果のまとめ

小松英一郎 計画研究D01代表マックスプランク宇宙物理学研究所(MPA) / カブリIPMU
加用一者研究分担者東京工科大学
高橋慶太郎研究分担者熊本大学
真喜屋龍研究協力者カブリIPMU / MPA
斎藤俊研究協力者MPA