B02 広天域深宇宙のイメージングによる加速宇宙の暗黒成分の研究

新たに開発したすばる超広視野カメラHyper Suprime-Cam (HSC)を用いた弱重力レンズ効果の解析により、ダークマター分布の「時間変化」を、従来に比べ10倍以上の広天域データを用いて高精度に計測する。すばるは遠方まで観測可能なので、観測体積では従来の20倍以上の領域になる。この観測結果を領域A02「宇宙の構造形成」で展開が期待される最新の数値宇宙論の結果と比較することにより、構造形成の成長率、極大スケールにおける一般相対論の検証、ニュートリノ質量の制限を行う。これらの計測結果を踏まえ、領域A03「ダークエネルギーの理論」の研究成果と合わせ、ダークエネルギーの正体の本質的な解明を目指す。これまでに、取得した約150平方度のデータに対して、2次元質量分布図を作成し、その信頼性を光学的に検出された銀河団との比較等を通じて、さまざまな手法でテストしてきている。

「時間変化」を調べるためには、天体までの距離を精度よく求める必要があり、これには測光的赤方偏移(Photo-Z)という手法を使う。しかしながら、本研究で必要なPhoto-Zの精度はまだ達成されていない。このため、Photo-Zのアルゴリズムのさらなる検討が必要である。我々のグループではこれまでにに、損失関数を定義し、その関数を最小化する点を代表値として採用する手法で、従来のメディアン値を使うものより高精度な推定を可能にしつつある。

また、ダークマターの存在を仮定する構造形成論そのものも、よくテストされているとは言いがたい。現在の理論は、天の川銀河の属する局所銀河群のような小スケールハローの中にも数多くのサブハローが存在することを予言する。しかしながら、局所銀河群で観測される矮小銀河等はその予言よりもはるかに少なく、これは missing satellite 問題として広く知られている。HSCを用いて小スケールにおける構造形成モデルのさらに高精度の観測的検証を行う。

ダークマターそのものの正体も依然興味深い研究対象であり、上記の構造形成論の検証と密接に結びついている。例えば矮小銀河問題の解決策として、ダークマター粒子同士の相互作用に速度依存するモデルや、崩壊するダークマター粒子のモデルが理論的に考案されているが、これらは銀河団内のダークマター分布にも反映される。新しい高速CMOSカメラを開発し、HSCデータから重力レンズ効果を用いて見つかった銀河団の中心部をより詳細に観測することで、ダークマターの正体に迫る。

 

宮崎聡計画研究B02代表国立天文台
田中賢幸研究分担者国立天文台
小宮山裕研究分担者国立天文台
川野元聡研究分担者国立天文台
古澤久徳研究分担者国立天文台
高田唯史研究分担者国立天文台
山田善彦研究分担者国立天文台
大栗真宗研究分担者東京大学
浜名崇研究分担者国立天文台
Guyon Olivier連携研究者国立天文台
初井宇記連携研究者独立行政法人理化学研究所
寺西信一連携研究者兵庫県立大学